1 犬ハープ
2 トロンバマリーナ 3 ダラブッカ 4 レベック 5 リコーダー |
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ベル 7 ハープ 8 アッサベバ 9 ストリングドラム |
獣頭の飾りが犬に似ていることから「犬ハープ」と呼んでいます。カンティガスのミニアチュール#380からの類推による復元、材は主にクリで、製作者は植木康司さんです。絃は12絃、いわゆるガット絃(生ガット)で、食肉店などから腸詰め用の羊腸を入手、塩抜き−水洗い−撚り−乾燥という手順で手作りしています。柔らかく響きの深い音を奏でます。 |
名前の意味は「海のトランペット」だそうですが、何故そう呼ばれるのか詳しいことは分からないようです・・・と以前はここにも書いていたのですが、NHK出演を機に調べてみると、古楽がマイナーな上に、その中でも最もと言っていいくらいマイナーな楽器なので、余り調べられてなかった、という事があるのかも知れないという感触が少し。 そんな訳で、調べてみると、おぼろげに輪郭が見えてきた所もあって、まず、このトロンバ(イタリア語)を素直にトランペットという完成された楽器と考えやすい所が、くせ者?で、楽器という機能よりも、形・・・つまり漏斗というか、ラッパというか、その形がそもそもの言葉の由来にあるようなんです。ですから、トランペットという高機能な楽器というより、ラッパと言った方が良さそうな気がしています。 更に、この形が命名の元と思うのですが、スペイン語にドンピシャな言葉があって、このトロンバマリーナ、つまり海のラッパは、海上で起きる水の竜巻のことそのものなんですね。#英語では"water spout"になるそうです。 そんなこんなを思うと、海といえば・・・で、ギリシャ神話の海の神・ポセイドンとその息子トリトンが気にかかってくる訳なんですが、怪しいと睨んだ通り、この息子のトリトンはホラ貝のラッパを常に携えていて、荒れた海を(これは親父さんの仕業だったりするんですが)、このラッパを吹いて静めてくれる、そんな説話がある訳なんです。 ローマの有名なトレビの泉、それからそのものずばりのトリトーネの泉には、頬を膨らませてラッパを吹くトリトンの姿も活写されていますね。 という訳で、この雑音豊富なホラ貝のラッパが、海のラッパということで、それでトロンバマリーナということだったのかも知れません。 あと、もう一つ面白い説があるんですが、それはトロンバマリーナはトロンバマリーアが転訛したのだというもので、演奏される曲の趣きや内容を考えると、また、修道尼が頬膨らませラッパを吹く代わりに(はしたない?)、このトロンバマリーナを使っていたという歴史的事実もあるそうで、これも切り捨てにくい面のある説だなぁ、と思いました。 あと、これは蛇足かも知れませんが、トリトンのトリは"tri"な訳で、お父さんのポセイドンの持ってる海のかき回し棒(武具)が、三つ叉の槍=tridentな訳で、で、トロンバマリーナは、何故か三枚の板を組み合わせた胴、断面が三角形という珍しい形の絃楽器でもある訳で、なにかあるかもよぉ・・・って気がしませんか? さて、楽器の方はと言いますと、 一絃の弓奏楽器で、絃倉(いとぐら)に近い方を短めの弓で弾きます。指板はなく、丁度バイオリンなどのフラジオレットのような奏法で、倍音のみを奏します。この辺りはトランペットに似ているのかも知れません。勾玉のような形をした駒が独特で、響板に密着せず、浮いてかすかに当たるようになっています。このせいで、ビーン・ビーンという滋養豊富な独特の音がします。南フランスやバスク地方では、今もなお民族楽器として使われています。製作者は同じく植木康司さん、絃はガットです。 |
北アフリカを中心に中近東で広く類似した楽器が使われています。胴は金属製のものが多いようですが、これは土製(素焼き)で、羊の皮が張られています。金属胴の物がナット等で皮の張り具合を調節できるのに対して、素焼きの物はこの調節ができないので、湿気の多い時には皮が緩み、少し鈍く重たい音になってしまうのですが、それも又、風情があって良し、ということにしています。 |
フィデルと並ぶ中世(11c-16c)の代表的な三絃の弓奏楽器です。アラブの楽器ウードやラバーブを祖先に持ち、東大寺正倉院に残る琵琶とも、つながりがあります。調絃は五度、五度で、ソプラノでは c,g,d アルトでは G,d,a となり、約1オクターブ半の音域は、中世世俗音楽の殆どの音域をカバーしています。天然の馬の毛を使用した弓、羊腸のガット絃とともに植木康司さんの作品です。 |
いわゆる縦笛(ソプラノ)です。近年の古楽・バロックブーム、小学校で習う楽器ということもあって、最もポピュラーな古楽器と言えるかも知れません。興隆を極めたバロック以降はその座をフルートに明け渡しますが、当時は現在のフルートのことを、わざわざ「横吹きのフルート」flauto traversoと呼び、ただ単にフルートと言えば、リコーダー(縦笛)を指しました。 単純な構造に見えますが、バロックとそれ以前(ルネサンス)の物では大きな違いがあります。バロックでは管の内径が先細りの円錐管ですが、ルネサンスではこの太さが変わらない円筒管になっています。円錐管(バロック)の方が作るのは難しいので、製作技術上の進歩がそうさせたのか、それとも音楽的な欲求がそれを促したのかは分かりませんが、円錐管(バロック)のものの方が、実用になる音域が広く、音程も安定しています。 しかし、その反面、若干ピーピーとした音色になり、円筒管(ルネサンス)の持つ、ケーナ(葦製の円筒管)の様なポーポーとした、大らかで、風を感じさせる音色が失われてしまったように思います。*円筒管が豊富な倍音成分を含む事がその一因だそうです。 こんな理由を支えに、ルネサンス以前の中世の笛ということで、円筒管のリコーダーを作り、それを使っています。またエッジ(吹き口の先の斜めに削られた音の鳴る部分)の穴の形はバロック、ルネサンスともに直線的で長方形状をしていますが、友人からお土産に貰ったスペインの縦笛(民俗楽器)のその部分が、丸ノミで斜めに削り取ったと思われる、半円状をしていたので、その削り方を採り入れて見ました。 材質は主にクルミ、カエデ、クリなどを使用、内径は15mm、製作は島田です。 |
鈴です。とてもシンプルな楽器ですが、たった一振りで、周りの雰囲気をその音色で包み込んでしまう魅力ある楽器です。イラストはネパール製の仏具の一種ですが、その他にトルコ製の金属製ミニシンバルのようなもの、西国巡礼の鈴などを使います。 |
前述の犬ハープより少し時代の下がった、15世紀フランスのものがモデルです。絃はガットの15絃、犬ハープより少し広い音域を持ち、やや華やかな音色が映えます。フレーム上部、ペグの近くにはゆるやかなカーブを描く凸部があり、丁度フレットの様な役割をして、半音が弾きやすくなっています。製作者は植木康司さんです。 |
長さ約60cm・六穴(指穴)・C管の横笛です。材質はイチョウですが、本来は葦(アシ cane)製のものをアッサベバと呼んだようです。モダンフルートとその長さ・最低音も一緒ですが、実用になる音域は狭く、約1オクターブ半と、フルートの半分もありません。長い上に(前述リコーダーの二倍)、指穴が六つと少なく、大きいので、演奏はとてもしにくいのですが、その大らかで包容力ある音色は、人の声とよく溶け合い、他の何にも代え難いものがあります。 因みに、この長さによる演奏のしにくさが理由と思われるのですが、バロック時代に興隆した木製の横笛(フルートトラベルソ)の主流は、管長の短くて済むD管でした。しかしながら、元々の?C管がやはり恋しかったのでしょうか、この演奏のしにくさを「キー」という近代装備でカバーし、更に飛躍的に音域を広げることに成功したヨーロッパは、無数のキーでがんじがらめにされたかの様な金属の横笛=フルートを手に入れたのです。成果と同じだけの何かを失ったような気がしてなりません。 葦と変わらない程の厚みまでに、薄く仕上げられたこの横笛も、植木康司さんの製作です。 |
別名コルス(Chorus)とも呼ばれるように、和音を奏でられる打絃楽器です。製作は植木康司さん。木の箱(共鳴胴)の上に張られた五本のガット絃を、棒状の木のスティックで叩いて音を出します。調律は様々に可能ですが、手前の二本と奥の二本をオクターブ違いの同じ音に、真ん中の一本を下から五度、上から四度の音程で調絃したようです。カンティガスの演奏では、この調絃で使うことが専らですが、例えば手前からd,d,a,d',d'という具合です。 中世のミニアチュールには、この楽器を小脇に抱え、右手のスティックで叩きながら、左手に持った笛を吹くという例が見られ、リズム楽器として用いられた様です。南フランスやスペインなどでは、これと全く同じように、お祭りなどで演奏するおじさんの姿を見ることができます。この時使う笛は、テイバーパイプ (tabor pipe)と呼ばれる三穴の笛で、親指ともう二つの指穴だけで1オクターブ強のメロディを吹くことができます。この笛は意外とポピュラーな様で、バルセロナの楽器屋でプラスチック製のものが売られていたりします。私も一本購入したのですが、マスターするには至っていません。いつかこの妙技?を披露したいものです。 |