38's in 194x
a trip in those days
 種々雑多な露店の並ぶ、スペインはバルセロナの大通り。旅の土産になにか面白いものでもあればと、タンスとおもちゃ箱をぶちまけたような平台のワゴンを漁っていると、色褪せてはいるが、写真屋なら見覚えのある朱色と紺のロゴが目に入った。AGFAのラベルが貼られたそのグレーの箱は、愛おしさを醸し出す紙製、そして名刺より一回り程大きい魅力的なサイズ。手にとってラベルを確かめれば、Isochrom Portrait Film の文字と、JAN 1944の日付。
 漠然とした期待を抱き箱を開ければ、中味はセミ判のモノクロネガ。数枚を陽にかざすと、人物らしき反転像が見える。帰国後焼いてみようと、数百円のその一箱を買ったのだが、あれから十年・・・伸ばし機にかけるには酷いカール等のダメージにお蔵入りしていたものを、遙かに手間要らずなフィルムスキャンならと、1943年の日めくりカレンダーに挿まれた38枚のそのネガを蘇らせてみた。

 元のネガの状態が想像できた方が良かろうと、補正はせず300dpiでスキャン、長辺方向360ピクセルにダウンサイズした。また、損傷の具合によっては、6x4.5cmのサイズでスキャンできないものあり、比率の崩れたものが数枚と、他に6x9cmのネガが一枚あり、これのみ長辺380ピクセルと、多少大きめにダウンサイズした。
 敢えて一覧表示のサムネイルを設けなかったのは、欧州戦時下の見知らぬ国の古いアルバムをめくるように、38枚を順にご覧頂き、某かの感を抱いて頂ければとの、制作者のお節介ではあるのだが、お許し頂ければ幸いである。
 なお時間軸を推理、復元するには些か荷が重く感じられたので、箱の中に重ねられた順に並べてみた。概ね時間の経過を感じられるようだが、この点についても、何か感じる所等、お聞かせ願えれば、また楽しからずやである。

アルバムへ

TOP