「いててて…ただでさえ狭くてかなわんのに、 まったくいきなりジェットコースターやられちゃかなわないね!」
と、実にたのしそうにケートが高笑い。
ところがこの双子、まったくの瓜二つのようでいて、 そうでないところがたったの1ヶ所だけあったのだ。
…エドナは気絶していた。
クルマが止まってから何秒が過ぎただろう。男をわれにかえらせたの は、ウジの自動小銃の乾いた掃射音だった。
「来たか!」と思い、身をステアリングホイールに伏せたとき聞こえたのは意外なことに聞き覚えのある声だった。
「観念おしよ! 坊やたち」
ポルシェのサンルーフから上半身をのりだし、ウジを2丁、両腕に構えて、仁王立ちしていたのは、はたしてケートだった。
謎の男たちをランチァに閉じ込め、ドアをロックしたケート、
「さてと、キーはどうしたものかねー?」
「すべての鍵は森にあり、ってね」男は遥かな山に向かってキーを投げた。
「さあ、侯爵がお待ちだ」すっかり調子を取り戻したエドナに、
「ったく、肝心なときにねてて」ケートはおカンムリである。
「?まぁ、兄弟喧嘩はほどほどに」男はとりなす。
「That's a tough act to follow. (あれくらいやられちゃ、あとがやりにくいやね)」
谷間に911の乾いたエンジン音が響いた。ベルンまであと25キロ。