星陵フィル第26回定期の感想です!

ベートーベン 交響曲第6番へ長調作品68  田園
マニュエル デ ファリャ バレエ 三角帽子
99年12月23日14:0
 昭和48年卒の野村和寿です。いい演奏会でした。海外のMLの方も多くいらっしゃるので、ルポ風にまとめてみました。長文御容赦。
  蒲田駅中央口の階段をのぼり、改札をでて、左に折れる。右手にシクラメンの出店、左に不二家のショートケーキのデコレーション6号2500円なり。今時、都心では不二家のケーキなんてあんまりお目かからないのでちょっと驚き。以前といってもざっともう29年も前によくこの駅を降りてミーティングとかに行った。その1ー2年後には、新装なった大田区民センターに練習に行った。駅前はそのころとほとんど変わっていない印象。右手の道を一歩入ったところに、不況の中小企業ひしめく周囲とはまったく似つかわしくない、白亜の殿堂が大田区民ホール アプリコ。
 墨田区のトリフォニーにも2階席からの傾斜が似ている。天井が普通のホールの1.5倍はあろうかという高さ、音はずいぶん、上に向かって抜けていく。いすと、ホール全体を木調に統一、突き板の響きもいい方に向かうに違いない。昔の杉並公会堂や神奈川県立音楽堂を思わせるウッディな空間。 今までの大井町のホール キュリアンに比べるとホールのグレードは、ずいぶん上がったので、演奏はどうかしら。期待が高まる。 14:03開演
 観客は前の3分の1を除いては、ほぼ、一階は、席が1列全部あいているという所はない。(もったいぶらないでいえば300人ぐらいか。)
 ベートーベンの「田園」のように、最初がものすごく有名で、最後がしっかりと完全終止で終わらない、ベートーベンの曲は、(ほかには、「コリオラン」の序曲とか)とても詩的で大人っぽい曲が多いのです。。 第一楽章の「田舎に着いてはればれとした気分」は、あまりにもさりげなく始まったので、聴くこちらとしては少しばかりとまどいました。曲を聴く心の準備がともなっていなかったかもしれません。それくらいさりげないスタート。心をおちつかせようと、もがいているうちに第2楽章へ。 第2楽章はおそろしいほど、ゆっくりのテンポ。正直、眠くなる寸前。日本の「田舎」ではなくて、ドイツの後ろをうっそうとした森に囲まれ、どこまでもつづく、牧草地と麦畑、(麦の穂と牧草は日本とは比較になら ないほど背が高いのです。そして、畑も広大。)その田舎の納屋の前にテーブルと椅子をおいて、ぼーっとしているような心持ち。
 近くの納屋には十分に乾いた、干し草があって、そこに寝そべる自分さえも想像できるような、ビオラをはじめとする旋律は、印象的。「遠い日の憧憬」のような音楽だった。ふわふわしていて、各パートの音は混沌としているのです。何も音楽は合っていればよいというものではありません。むしろ、全体の気分が細かい音の連なりとなってきこえてくるほうがよっぽど、作曲者に寄り添えるのです。これほんと。  第3楽章の「農民たちの楽しい集い」にきて、2楽章の止まりそうなテンポとの対比がよくわかって面白い。農民たちの踊りのように、洗練されてはいないが、生なりのよさのような、踊りの音楽。そして、問題の4楽章二突入。このために安さんに率いられた7本に増強 されたコントラバスの超強力で凛々しいことか。細かい音は全部ひいていて、それがもごもごしないで、とても1つ1つ聞こえていました。あれは、プロのオケでもなかなか聴くことができない、混濁からの脱却と勝利です。 うん、やはり、2楽章の混濁もよかったけれど、合っていることもよかったとも思いました。
 あの嵐の最後の所で、すべての細かいパッセージをクリアしたあとの、ブン!と一発やるときの、みなさんのちょっと誇らしげな表情が目に焼きついております。
 そして最終第5楽章。もうオーケストラは飛翔していました。それほど、各パートはかたさもとれて、自由でした。この後に、もう一度第1楽章をこの調子で聴けたら、もっと印象的なのにと、少し思ってしまいました。
 このホール、1階では弦楽器の音は上にぬけすぎてしまい、ほとんど残響もなく、かなり薄く聞こえてしまいます。その証拠に2曲目の「三角帽子」を2階席で聴きましたが、ブレンド感とひびきともに数等きれいでした。
 「三角帽子」については、私はほんの少ししか、レコードによる体験さえもありません。もしかすると演奏会で聴いていても私にとっては、あまり記憶に残りにくい曲なのかもしれない。と思っていました。少なくとも本番までは。 この曲に遭遇し一気に盛り上がったという風情。それだけ楽しくもあり、わくわくする音楽が、ティンパニはもとより、ドラ カスタネット トライアングル バスドラ チェレスタ ピアノに至るまでパーカッション ピアノまで入れると8人というおよそ盛大な人数から聞こえてきました。指揮者のコバさんが舞台上で踊っていた本日唯一のバレエ団でした。
 「三角帽子」の冒頭の序章の部分では、トランペットの軽いきっかけを皮切りに、オケ全員が手拍子を打ち鳴らし、メゾ・ソプラノの解説調の歌が入るという、今はやりの演奏会形式かと思えるほど、豪華なフルオーケストラ。長いソロを成功させたファゴットの栗原君をはじめ、さぞかし、後の酒がうまかったことでしょう。
 アンコールでは、カルメンの「ジプシーの歌」をちょっと控えめの振りとともに歌った、太田悦世さんは、ちょっとマリア・カラスばりの野太い声で、2階席まで、その低い部分から声が聞こえてくる。特に低音部の女性にとって歌いにくい音域は、余裕もあるし、幅もある。今日本にメゾ・のいい声は少ない。できればおったーのように、「バラの騎士」のオクタヴィアンから、「カルメン」、そして「こうもり」のオルロフスキー伯爵まで幅広く歌ってほしいものです。太田さんの出番は最初と途中だけだったけれど、最初にあんなにすごい歌唱が飛び出すと、音楽がしまりますし、 とても豪華になりました。訓練された声というのは、聴いていてとてもオケに安心感を与え、幅広さを与え、喜びを与えてくれました。コバサンの一人バレエ団は、楽しそうに全編で、飛翔を繰り返していました。スペインのシグロのちょっと発泡性のワインは、フランスのシャンパンまではいきませんが、キリっとしていて、ちょっと鋭角的刺激を与え食欲を増進させます。それとも少し似て、リズムの繰り返しがとても、コバサンの振る棒でオケが動き、それにつられるようにコバサンも楽しそうに踊っていらっしゃいました。こういう曲は聴いて楽しいけれど、やってもっと楽しくなる曲でしょうね。 年末にいい体験をありがとうございました。

Date: Thu, 23 Dec 1999 17:35 +0000
Subject: [seiryo:04070] 星陵フィル第26回定期の感想です!