チェコフィル ヤナーチェックの録音

 97年5月 チェコフィル ヤナーチェックの録音
皆様 先週プラハにオフで出かけて参りました。
わずか4泊6日の超短い旅だったのですが、 いろいろな収穫がありました。
そこで、これから何回かに分けて、 旅日記をご紹介し、旅のみやげ話としたいと思います。
是非 ご意見ご感想お送りくださいませ。
目次
 1、97年5月13ー16日
連日9時30分から午後まで
ヴァーレク指揮チェコフィル
ヤナーチェック シンフォニエッタ他  
ポニーキャニオン録音
録音場所 プラハ芸術家の家大ホール
 2、97年5月14日 プラハの春音楽祭
井上道義 指揮 京都市交響楽団
プラハ スメタナホール
曲目 ブラームス 交響曲第4番
 3、97年5月15日 プラハの春音楽祭
サー・コリン・デイビス指揮 ロンドン交響楽団
ソロ アンネ・ゾフィー・ムター
曲目 ベートーベン バイオリン協奏曲  ブラームス 交響曲第1番
 4、97年5月16日 プラハの春音楽祭
サー・コリン・デイビス指揮 ロンドン交響楽団
ソロ アンネ・ゾフィー・ムター
曲目 モーツアルト ピアノ協奏曲第24番  ブラームス 交響曲第2番
 それでは 本日は1からまいりましょう。
 97年5月13日から16日 ヴァ−レク指揮チェコフィルハ−モニ−管弦楽団 ヤナ−チェック タラス・ブラーバ シンフォニエッタ スーク プラーガ プラハ・ドボルザ−クホ−ル(ルドルフィヌム芸術家の家 大ホ−ル) 5月のプラハは、スメタナの我が祖国で始まる「プラハの春」音楽祭で1色、 町には音楽祭の旗があふれ・・・・・だと、思うでしょう。 でも、日本で思う音楽祭の雰囲気はどこにもなかった。 現にチェコフィルは後半まで、この音楽祭には顔をみせていない。 まったく日常の活動をしている。 街も平穏そのもので、前半の音楽祭は会場が新装なったスメタナホ−ル。 スメタナホールの中だけが音楽祭である。 どうも音楽祭に集まる聴衆は、プラハの中でもハイソサエティーの様子。 他の人はあいもかわらず、「ドン・ジョバンニ」のマリオネット劇場や、 モ−ツアルトのいいところだけを上演する劇場、 オペラも何箇所も一緒に上演している。ここでも「ドン・ジョバンニ」をやってい た。 オペラの前はロビ−もないみたいで、外に人があふれていた。
  今回の目的は何といっても、普段着のチェコフィルで ヤナ−チェックを聴くこと。まず、そこから話を始めることにしよう。
 ヤナ−チェックを聴いたことがありますか?
 ヤナ−チェックは、ちょうど、ドボルザ−クの交響曲第10番!? ブラームスがベートーベンの交響曲第10番といわれたのと同じように、 後をついだ感じで、これにスメタナが加わり、しかも変拍子が加わったようで、 森の様子だったり、大きな山あり谷ありの景観だったりして、 大パノラマを見るような、もしくは、大活劇とかの昔のハリウッド映画の バックに流れるような壮大な曲でした。大きな森を感じる冒頭で、 オルガン、オーボエのソロ、バイオリンのソロ、まで出てくる。金管は活躍するし 、 ティンパニの連打はあるし、もうスペクタクル。始めのバイオリンのソロや 、コントラバスのソロも登場し、しかも「我が祖国」のようなうねるような 感じのハ−プも登場したりします。曲は25分くらいだけれど、中には大げさ とも思えるような金管の登場で幕を閉じるところなんか、聴くたびに面白いと 思うかもしれません。
  チェコは今回で4度めになりますが、今回はチェコフィルの主席指揮者のヴァ−レクの指揮。 ヤナ−チェックのシンフォニエッタと上に書いた タラス・ブラーバ作曲年は1915-18(第1次大戦中!だ) そして、 ス−クという作曲家の曲を1枚にまとめた、オ−ルチェコプログラム。 この指揮者は君臨しているという感じではなくて、友達付き合いという感じ。 シンフォニエッタ(作曲年は1926年)では、リムスキー・コルサコフがもっと、 西に生まれたら、こんな感じか?オーケストレーションは派手の一言。 金管楽器の音はまっすぐにのびてくる。ルドルフィヌムの終わった後の残響の長さはすごい。ホール特有のアーの音の何か残像のような音の響きが、 3秒以上残る。金管の音は目に見えるようにまっすぐに走る。
  曲の感じは、大きなアコーディオンが、弦楽器の伴奏の下、金管が鳴る東特有の香り。朝飯に出た豚肉とピーマンの香りのような いためもののような混沌とした感じ。 チェコ・プラハの人々の、 混沌、焦燥、茶色、金色の輝き、クリスタルのような町中にあふれる 人間に似ているのではないか? ビールとそこそこの贅沢といった気持ちの良い音だ。
 ヤナーチェックを、これはモラビアの歌なのだから、 軽く過ぎ去ってしまうのはよくない。 自分たちの流儀でここはこうやって吹くんだぞということを、 とても誇りにしていた。この間、サー・チャールズ・マッケラスで やった時はここは軽く流してしまった。 でもそうではいけない。ここは、もっと決然と、 アタックをかけるところだ。今日はヴァ−レクはそういうテンポを つくってくれてうれしい。
  「シンフォニエッタ」最初と最後にでる、10本のトランペット部隊は正に壮観そのものだ。 このパ−トはこの人と自ら選んだ。 だからよかったでしょうと笑うトランペットの首席のケイマル氏。 面白いのはオルガンの所に、2階に10人、そして脇に二人のあれはワグナ−チュ−バ(スコアではテナーチューバ変ロ)か。 そして、通常の金管位置は、右サイド奥、 ティンパニを中心として、左寄りに、あれはバストランペットが二人いる。 耳をつんざくばかりの大きさかと思うとさにあらず、 とても気持ちのよい溶け合いをもった柔らかな音。 ボヘミアの金管楽器ここにありという感じが、無人のホ−ルに軽やかに高鳴ってい る。 大きな空間に金管楽器が出ていくときは、どうも、音が広がっていくのが、 煙のようにみえるみたいに、す−っと広がるからとても不思議だ。