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「プラハの春でブレンデルを聴く
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97年5月 プラハの春でブレンデルを聴く 4,5月16日 同じくプラハの春音楽祭 スメタナホ−ル 指揮 コリン・デイビス ロンドン交響楽団 ピアノ アルフレッド・ブレンデル 曲目 モ−ツアルト オ−ケストラのためのメヌエット K.409 モ−ツアルト ピアノ協奏曲第24番 K.491 ブラ−ムス 交響曲第2番 |
シャンペンの泡のような音、ブ−ケのような口から鼻にかけて広がる。
ファンタスティックと口でいってみてください。 その時の口のふわっという感じのブ−ケです。 あれです。ミレの香りのような。 ブラ−ムスが頭の中で鳴っている。
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第1楽章の最後のところ、チェロバスの低い旋律で、テ−マと、
バイオリンがどんどん上がっていくホルンの広がり、 そんな感じが耳に焼きついている。各パ−トが完全に合っている というところへもってきて、
特にテンポの変わり目、拍の最後の所で次の小節の始まるほんの少し前に、 過激にあおる感じ。そのテンポはとても自在。ホ−ルは体育館のごとくに、
上に空間がのび、お風呂場できいているよう。でも混濁感は少ない。 各パ−トはまとまっている。もりあげるときのあの過激なまでの変化に オ−ケストラはついていく。シェフが素材を調理するのにとても似ている感じ。
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ブレンデルのやった24番のピアノコンチェルトは、少しもオケと合わせたこと
がないくらい、テンポが、オケとソリストとで違っていたので、 何か両者が戦っているようだった。でもそれが協奏曲というのだろうか。 しかし、ゆっくりの楽章をぶれんでるは、1音1音確かめるようにたたく
というよりもそんな感じで弾いた。有名な2楽章のテ−マのテンポが最初の ピアノが決めたのもいいのかもしれない。ラ−ララ・ラレレ・・・ というあの有名な音楽。しかもインテンポの中でやることは大きく。
かっこうはつけていないピアノ。これに対するロンドン響の木管は、 ピアノと木管のアンサンブルを聴くかのように、びちっとあってきて、 ピアノの続きを木管でやるがごとく、渾然一体となっていた。
早い部分はさっきの感じだが。
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アンコ−ルでバッハをピアノで聴く。
このバッハがコラ−ルのように、和音がとても美しい溶け合いをみせる。 今度は音楽に対してとても控えめに弾く感じで自分流のテンポの付け方はしない。
ファンタジ−かコラ−ルのようにはもっているなんて、 ピアノなのに驚きでさる。
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ブラ−ムスの2番はこれがヨ−ロッパで聴ける音だと
するならば、とても安定感のある、ベ−スからバイオリンに至までの 大きなピラミッド上の構築度、これはレコ−ドで聴いたフルトベングラ−とかに
とても似ている印象。重くないのに力強く、ホルンは、ホ−ルじゅうに いっぱいに広がり、バイオリンはのびとつやをみせ、金管は高鳴り、 木管は牧歌的なように、くすんだ印象を与える。金管はブリリアントそのもので、
一人がふいているときのアタックが必要なところでは一気に目の前に 飛びだしてくる感じ。
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ぼくの2列前にチェコフィルのトランペットの首席、
ケイマル氏も女性同伴で聴きにきていた。モ−ツアルトがおわり声をかけると、 親指を下におろすサイン。でもアンンコ−ルのバッハはとてもファンタスティックだったといっていた。しかし、ブラ−ムスの時の聴いているケイマル氏は
とても面白かった、まるで自分がやっているかのように、あちこち、 きょろきょろし、うまくいくと、うなづき、失敗するとやっちゃったという仕種。
面白いのはトランペットのちょっとしたようにしか聞こえない部分なのに、 ピアニシモでポンと入るところなんか、ここは難しいんだ、うん、あれでいいとい顔になった。最後に張り切りすぎて、トランペットは1音はずしぎみになったが、老を労うかのようによかったよかった、と一生懸命拍手をしているところをみると
、 かなり楽しんだ様子だった。
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ぼくの席は、始まる10分前にダフ屋の女性から手に入れた。
2163クロ−ネのところ2倍の2倍の4000。といっても日本円でいえば、 1万円に満たない。ア−ルデコ超のすっかり塗り替えられて、 19世紀末はきっとかくあるべしと思われた建物、レストラン、カフェ、
そして、ロビ−は小さいせいもあるが、 正装の美しいカクテルドレスの女性とタキシ−ドの男性でごったがえしていた。 どんな席だろうと、席を探すと、なんと1階のパルテレ平土間の真真ん中!
これには驚きだ。同じ列には初日を指揮したガエタ−ノも見える。
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1階は傾斜がまったくなくて、本当の平土間。でも真ん中の通路はとても広く、
あまた前部と後部を分ける、通路があるせいで、 ぼくの席はとてもよく全体があおるように見渡せる。これには興奮。 両そでと共にステ−ジの真ん中ティンパニ−の後ろにドアがあり、
そこからも楽員が登場する。最初の日の熱狂的な拍手はないが、もう、 みんなこのホ−ルに慣れてきた感じだ。ティンパニ−は、 プラスティックの振動板だったが、たたく人がうまいせいか、
とてもクリア−で、軽くパンと響くときと、ゆっくり、ボ−ンという時と、 本当に音を表現するのがうまい。
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休憩後、あいている席がないかと、2階の奥から多くの人が、集まっている。
係の人は、追い出すのが普通なのに、ここでは追い出すばかりか、 こことここがあいてるよと、教えてくれる始末。あいているのだから皆で 楽しもうという気持ちなのだ。美しい脚の長い黒いカクテルドレス、
スリットのとても大胆な女性が一人、席を探している様子なので、 ぼくは目配せして、席があいているよと目配せしてやった。意思が通じるのは なにかやんちゃな感じでうれしい。休憩には、
演奏を終えたブレンデルは平服に着替えて、 何と一列前の席にくるからこれまた、びっくり。隣の聴衆は、 とてもよかったですよと、控えめに賛辞を送る。
みんな労るように剥き出しの好奇心もなく、 静かにブレンデルを囲んでいる。
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ロンドン交響楽団には、 いろいろな意味で日本のオ−ケストラの目指すいろいろな音がある。
弦楽器のやわらかさ、難しい部分になると、ますますクリア−に、 きっちりと、アンサンブルがそろうし、はっきりと発音するような音。 木管のまとまり、それに溶け合うホルンがとても素敵。
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帰りは11時を回っていた。 ホテル近くのカフェのテラスで、ビ−ルを頼む。
残念ながらもう料理は終わっていた。そこでチ−ズをいくつか盛り合わ せてもらい、それにパンと非常にシンプルな食事。それに、Lサイズの ビ−ルを2杯。とてもいい気持ちになる。これで、500円もしない。
とても安い、しかもスモ−クとブル−とナチュラルと。
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もしかするとなのだけれど、いつもいつも何かはなしをしていて、
ぜんぜんまとまらなくて、女の子がかわいくて、恋がたくさんあって、 8時9時まで明るくて、カフェがずっとあいていて、ビ−ルがうまくて、 麦のぶつぶつした味がある生ビ−ルで。そこに音楽が生まれるのですきっと。
画一的な仕事をよしとし、きちんとしたスケジュ−ルが最大の善とおもわれ ている国からやってくると、とてもル−ズにみえるけれど、それが音楽なのです。
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