焚き火の暖と煙はなかったが、その山茶花は垣根の曲がり角、地面に付 きそうな程の低い所で、路石に頭を垂れて、咲いていた。
 色づいた葉の姿は消え、花もまた少なし、そんな季節の日向に日影に咲く赤い花は、目を潤しまた可憐。冷え込んだ晴天の一日だったが、この時候に降る時雨は、山茶花時雨と呼ばれるそうな。

 雨の山茶花の散るでもなく
 うしろすがたのしぐれてゆくか
 種田山頭火

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