もう少し待ってからかなぁ・・・
 木立の陰で見習いは迷っていた。

 狙うのは、坂道を向こうからやって来る人。そう決めはしたものの、 この小一時間程、誰もやって来ない上に、教わったはずの肝心の「その時」が、よく分からなかったのだ。
 低くて長い冬の陽ではあったが、「誰そ彼」の時にはまだ早かった。見ると、その逢魔が時を前に、河童に似たその小さな妖怪は、こっくりこっくりと船を漕ぎ始めていた。

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