湖上の王国に、王の姿は見えなかった。 しかし、それはさして大事な事ではなかった。 何故なら、姿は見えなくとも、王の威光は、小さな島に普く満ちていたから。 しかし、暫し雲間に隠れていた陽が顔を出し、冷たい風が運ばれてくると、島の様相の全てが一瞬変わった。 「あ、いらしたのだ」誰もが安堵に似た喜びを滲ませた。