その昔、格子の向こうのその空に飛び込んで行った男が居た。男は虜囚の身、千里離れた故郷には待つ者ありて、幾星霜が過ぎ、男の帰還は、小さな迷惑と大きな喜びとなった。 西の雪国の落日は間もなく。列車を待つ駅前の喫茶店、程よく磨かれたテーブルには、窓と空、そして小さな神話が映っていた。