Opus.3
A town in an island


島の町

 島の南端、海に寄り添うようにして日を浴びるその町は遠い。空港からバスで1時間半、夏を語る車と空に迎えられ、港に着く。去るのか、往くのか、革靴と靴下を脱ぎ、潮風と夏の日差しを無心に浴びるビジネスマンを乗せた高速船で1時間、そして目的の場所までは更に車で1時間。夕暮れにライトアップされた、緩やかなカーブを描く美しい橋と港を望む店にて、宴あり。島の今昔、人、酒、そして旬の美味・イサキを味わう。都会の人間は恥じ入りたくなる程、ここでは政治は身近だ。150億をかけたその美しい橋の是非について、論議は酒の肴となる。清濁など些細な問題、そこには、深く熱い血潮が流れている。
 熊本県牛深市、美しい天草の島の町、情け深しとも、潮深しともある、万葉集のその謂われが、その海・山・人の風景とともに、胸に染みこむ。


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