Opus.5
A silent dialogue


静かな対話

 「実物がそこにあるから、実物をもう何度も見ているから、写真はいらないと云われる写真では、情けない。 実物がそこにあっても、実物を何度も見ていても、実物以上に実物であり、何度見た以上に見せてくれる写真が、本当の写真というものである。
 写真は肉眼を越える。」
 こう語る男の肖像は、”鬼”と呼ばれた強靱な意志を感じさせるその風貌とぴたりと重なるのだが・・・
  「・・・写真の中でも、ねらった通りにピッタリ撮れた写真は、一番つまらない。 ”なんて間がいいんでしょう”という写真になる。そこがむずかしいのである。」
 こう語る男と何故、同一人物なのか?答えはそこにあった。
 美しい鳥海山を望む水面に浮かび、愛機ニコンSPと、巨大なプリントが静かに語りかける場所、土門拳記念館。彼の写真は実に素直で、そして穏やかな海原のような力強さに満ちていた。


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