Opus.8
In the neighborhood of a river

川のほとり

 初めて訪れる街は、川のほとりにあった。午前9時、水、トイレ、木陰、腰掛けの揃った公園に母と子の遊ぶ余地はなく、暮らしの断片と、休息を求める人々がどんよりと集う。そんな生き方を余儀なくされたのか、あるいはそれを選んだのか、堤にはブルーシートの、街の軒先には段ボールの、彼らの「家」が立ち並ぶ。かろうじて、政治の温度を感じることのできるこの街、その昔は、公家の別邸も置かれた風光明媚の地であり、江戸火消しの流れ絶やさぬ地でもある。
  隅田川にかかる白髭橋の袂、台東区日本堤・清川一帯、通称「山谷」と呼ばれる街、四枚で伝えられるのは、ほんの断片に過ぎないようだ。


backnumber

All Rights Reserved. Copyright (c) Satoshi Shimada 2000