Opus.18
Terminal

終着駅

 今となっては、官民の唱和と共に、リサイクルという「常識」に成り下がって復活したが、かつては、慎ましく賢いたしなみとして存在したモノとの付き合い。そのたしなみを忘れさせるのに充分な豊かさを、トントン拍子に味わうことのできた高度成長期、その島は生まれた。綿思わせる雲の棚引く青空に向かって伸びる、オブジェの様なその塔は、かつて己の醜さを見せられたかのようなショックを味わった、数々のゴミによって埋め立てられた夢の島、新江東清掃工場の煙突である。
 税で賄われる最新の技術は、手間暇惜しんだ我々の尻拭い、ゴミを選り分け、圧縮あるいは破砕し、当時比、20分の1の体積までの減量を可能としたが、捨てるに忍びないと、モノたちの最後を見届ける人々に救われた、名ある作家の作品が「中防の女神」と名付けられ、庁舎展望室に佇む。
 その展望室から望む、まだ海面の残る「中防」=中央防波堤が、モノたちの今の終着駅、実にクリーンな最新技術によって、また島が生まれようとしている。ターミナルはまた始発の駅でもある、その昔、そんな土地に「夢の島」と名付けた人々、今度はどんな名を与えるのだろう。


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