Opus.25
Spring in the sunlight

光の春

 肌に触れる空気は凛として冷たいが、木馬が背中に浴びる日差しは暖かそうで、木漏れ日は新緑の季節さえ思わせる。小さな水辺の落葉、透ける水底、映る梢も、凍える風情はなく、あまねく輝く。昼下がりのその日差しは、部屋の花にもやって来て、皆に知らせたがっているかの様。そして、ぽいと放り投げられた種から芽吹き、育ったのか、その枇杷の葉は空に向かい、主(あるじ)に応えようとしている。
 未だ春風吹かずとも、光は既に駘蕩なり。


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