Opus.32
A foot of mountains 峰々の麓 雪を頂く懐深い山塊、南アルプスの麓、山梨県早川町。焼き畑で知られる、山人の風俗残る奈良田の里には春の雪降り、谷はぱらぱらと白粉(おしろい)を被る。硯でその名を知られる、往時は金山の里、雨畑。ようやく蕾を広げた蕗の薹は、その可愛らしい姿をくっきりと見せ、雪止んだ翌日のひんやりとした好天の朝、廃校となった校庭の一画で育つ白樺は、日向と日影で作られた静かな衣装を素直に纏う。そしてその校庭の向こうには、一万尺が輝いている。 |
All Rights Reserved. Copyright (c) Satoshi Shimada 2001