Opus.34
A balmy light

薫光

 けやきの梢、目覚めだした若葉はまだ幼く、清々しい空と雲が望める頃。しかし、日一日とみるみるその葉は繁りだし、隠してしまった空と雲を、今度は光と影の模様に変えて、家の壁に映し出す。影と光は濃くも淡くもなり変幻自在、プランターの花を硬くきらきらと輝かせたと思えば、木漏れ日となって、それは柔らかくつつじを照射する。
 街の梢にたわわに青葉繁るのも、もう間もなく、やがてその香りをのせた薫風渡るまでの一時、光が薫る。


backnumber

All Rights Reserved. Copyright (c) Satoshi Shimada 2001