Opus.40
The continuation of Aoniyoshi

続・青丹よし

 古都一望の二月堂を去り、その山裾を往く。春萌え招く山焼きの、のどかな若草山を過ぎれば、そこは、春日大社の杜なる春日山原生林。折しも降りそぼる雨に、道は輝き、手つかずの森は、しっとりとべたつく命の水に満たされる。登り、下り、幾つかの小川を渡り、森を抜け、新薬師寺へ参る。土門拳の力作で知られる踊るような天平仏の傑作、十二神将像と対面し、青々とした栃の葉繁り、優しいその枝を軒のようにかざすヒマラヤ杉そびえる、お決まりの店で足を休め、一杯の珈琲を頂く。
 「青丹よし奈良の大道は行き良けどこの山道は行き悪しかりけり 」 万葉集より


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