茶筒などの樺細工に使われる、つやつやと若く、独特の赤みを帯びたそれとはまるで違った、ごつごつ、ざらざらとした木肌は、戦後間もなく植えられた桜並木の樹齢五十年を超える老樹の偽り無い姿。幾度も剪定を施されたその太い幹からは、直に顔を出した蕾と、切られても又、伸びようとする若い枝。頭上に広がる他の枝の蕾より、ぐっと鮮やかでふくよかなその膨らみの集う辺りは、精気を静かに湧出する「生命の泉」とでも呼びたくなるような場所に思えた。
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