1999年7月22日 No.32

 筆者が練習のため訪れる神学校のチャペルには、これを見守るように、この像が佇んでいる。その造形、衣裳、二匹の獅子に両脇を護られた配置などは、仏像と呼ぶのに相応しいものだが、左腕にはしっかりと幼子が抱かれていて、狩野芳崖描くところの「悲母観音像」を、そして、聖母マリアを思い起こさせる。右腕が欠けているのは、何かの事故か、廃仏毀釈の故であろうか、仏教、キリスト教、神道、三宗教の意外に複雑な我が国での興亡を感じさせてくれる。バックの濃い緑はかなりイマイチだが、石の質感はまぁまぁの描写だ。

before  next

All Rights Reserved. Copyright (c) Satoshi Shimada 1999